親が介護施設に入居することを嫌がる時、どうすればよい?理想と現実。
皆さんの中で親を在宅介護をすることに限界を感じてきて、現在施設を検討している…という方はいらっしゃいますか?
介護を受けている本人が施設を探す、というケースもありますが、家族が「在宅介護をするのが難しくなってきたから」ということで施設を探し入居という形が圧倒的に多数だと思います。
必要に迫られて親に施設への入居を促すとき、親がそれを拒否した時家族はどうすればよいのでしょうか。
そして拒否する親のその心のうちはどのようなものなのでしょうか。
⭐親を介護施設に入れるにあたっての理想と現実
・施設入居を現実的に考えるタイミング
家族は「在宅介護をするのが難しくなってきたから」という理由で入居を考え始めます。
介護生活がスタートしてから漠然と「近い将来施設入居もあるかもしれないな」と考えていた頃と違い、在宅介護の限界が見えてきた時には親の気持ちを考えた上での立地だけでなく現実的に自身の通いやすさや費用などより具体的に条件の合う施設に的を絞って探し始めることになります。認知症を発症してしまったら、その時はまだ軽度で大丈夫、と安心せずにすぐに現実的に施設を探し始めましょう。
・具体的な施設を親に奨めるタイミング
元気なうちは将来介護生活が始まったらどうしようか?とさらりと話ができていた家族でも、現実味を帯びてくるとなかなか親の気持ちを思いやって、または何となく罪悪感から具体的な話し合いができるご家族は少ないのではないでしょうか。
そこで家族はある程度的を絞って見学なども済ませ「ここなら親をお願いできる」と思った施設が見つかってからから親に話をすることになります。
・親が施設入居に難色を示したら
施設入居の話が現実味を帯びてきたとき、親に話を出しても素直に「そうかそうか。わかった、入居しよう」と納得される方はほとんどいないのではないでしょうか。
むしろそれまでは「こんなに動けないんじゃ施設に入居するしかないなぁ」と笑いながら言っていた親が目の色を変えて「絶対に嫌だ」と抵抗されることもあります。
そんなときに、「本人が嫌がるから、このまま頑張るしかない」と抱え込むしかないのでしょうか。
・可能であれば納得してもらう
理想はもちろん、家族も本人も、双方納得のうえで入居することです。
施設の方もその方が助かるでしょうし、施設によっては本人の同意がなければ入居できないところもあります。
施設入居というだけで「家族に捨てられた」と思い悲しい気持ちになってしまう方が多いので、そうではないこと、親に安全に生活してもらいたいのでそのために一番良い方法が施設入居であることを本人に伝え、了承を得て入居してもらうのが理想です。
⭐介護施設入居までの道のり
・スムーズに入居するために
施設の見学や職員との面談の時に職員の方からも本人に、入居後の生活についての説明をしてもらうと良いでしょう。
入居後の生活が不安で拒否をする方の場合は、ほとんどの有料老人ホームでは体験入居ができるようになっているので、それを利用するのもひとつの方法です。
この体験入居の目的は、利用者側が施設生活について確認することはもちろん、施設側も利用者がいったいどういう人なのかの把握をするためでもあります。
(公的な特養や老健では体験入居はなし。その場合はショートステイを利用)
・それでも入居を拒否する、必要性が理解できない場合
説得や説明で入居を納得してくれる方は少数だと思います。
施設入居を決められる方に多い理由は、身体の障害、身体機能低下ということによるのではなく、認知症によって介護負担が大きくなってきたから、というものです。
認知症の症状にもよりますが、進行すると家での生活が難しくなる日がいつか必ずやって来ます。
そこを家族が「本人が入居を嫌がるから」という理由で頑張って、家で介護するというのはあまり得策とは言えないでしょう。
それによって在宅介護を続けて、介護疲れから今度は家族が体調を崩し仕事や家事が疎かになり生活が回らなくなり利用者を憎むようになる、となると誰も得をしませんし、後悔することにもなります。
ここで大切なのは認知症があるかないかによって入居の決定が比較的スムーズになる現実がある、ということです。
認知症がある程度進行していたり、入居の必要性を理解できなかったりする方に関しては、強引に入居させてしまうという方法もあります。
⭐家族が本当にするべきことは何か
・私の体験談
20年ほど前、私が祖母の介護をしていた頃、リビングの壁紙が傷んできたので張り替えることになりました。
5日間ほど業者の出入りがあることや、荷物の移動などで家の中が落ち着かないこともあり、祖母に充分なお世話ができないと思い老人保険施設に1週間だけ滞在してもらいたいと伝えました。
それまでは冗談で笑いながら「一回そういうところに泊まってみたい」と言っていた祖母でしたが、話を出したとたん機嫌が悪くなり「そんなところ死んでも行かない、何も世話をしなくて良いからここに居させてくれ。」と言うのです。
弱っている家族に懇願されたら無下にはできません。
かわいそうになってしまってその話は一度流れました。
次に同じような話があったのは私が介護疲れでダウンしてしまった時です。
父が「1週間ほどお祖母さんを施設に預かってもらおう。」
そう言って無理矢理話を進めて連れていきました。
父は私のためを思って無理矢理行動に移してくれたのだと思いますが、祖母は施設で「早く家に帰りたい」
「ここの食事は美味しくない」などとわがままを言って職員の方を困らせていたようでした。
・預けられる側の気持ち
このような私の祖母の態度は、当時「わがまま言って」と一言で括ってしまっていました。
でも本当はその底に「老い行く者」「死に行く者」の生への執着と言いますか「命」の時間が短いことを無意識であろうが感じることによる寂しさや恐怖というものがあるのではないかと思うのです。
身近な人間にその恐怖からくる不安をぶつけていたのかも知れません。
そして実際はショートステイでしたが、本人はもしかしたら「帰れなくなるかもしれない」「騙されて施設に入れられたのかもしれない」と思っていたのではないでしょうか。
当時の私は若かったのでそこまで頭は回っていませんでしたが今なら少しそういう気持ちだったのかな、と思えます。
元気なうちは冷静に物事を考えることができ、人生についても自分なりに終わりの時を考えて家族に迷惑をかけまい、と心に決めていたとしても、認知症でなくとも加齢による認知機能の衰えなど脳の問題で自分の意思を強く持ち続けることが不可能になるのではないでしょうか。
・目の前の人格だけでなく親の人生を振り替えってみて
人生トータルでの人格を尊重した決定をしたい
この難しい問題を自分のこととして考えてみると少し不安になります。
今私は持病があるとはいえ、とりあえず自分の力で生活をすることができています。
病気がちですので人より少し終わりの時を考える時期を早くしなければならないといつも考えています。
今は「子供に迷惑をかけたくない」「子供の邪魔になるなら施設でも構わない」と強く思っているのですが実際体が動かなくなってきたらどうでしょうか。
もしかすると物凄く「自宅」に執着するかもしれないなと時々不安になります。施設が嫌だ、というより自宅ではない場所を終の住みかにすることが考えられないのです。
自分の思い出のたくさん詰まった家から施設へ引っ越すとなると、時々家の様子を見に行くというわけにはいかないので完全に過去の生活に別れを告げていくことになります
その人の性格にもよりますが、私なら家族に迷惑をかけるのは嫌だけれど、家から離れたら虚無感で認知症を発症してしまうのではないかとさえとても情けないのですがそう思います。
この記事を書きながら色々と思うところがあり、子供たちには「認知症になったら迷わず施設に入れてくれていいよ。」と伝えました。
今、認知症でも何でもない私は、子供たちに大変な思いをさせるのは本当に忍びない、子供たちが大切で命に代えても守りたいと思っています。
でも認知症が進み、自分が自分であることを忘れてしまったら本来の私自身の考えはどこかへ行ってしまって、認知症で変わってしまった人格の私が子供たちひどいことを言ったり、困らせたりするかもしれません。
子供たちには私という人間がどのようにしてできあがって、人生の中で何を大切にしたいのか、守り続けたいのかをきちんと話したいと思っています。
「お母さんがもしも認知症になってひどいことを言ったり、施設に入りたくないと言って泣きわめいても入れてほしい。なぜなら本当の私はあなたたちが大好きであなたたちの幸せのみを望んでいるんだよ。」
と強く強く言い聞かせておきたいと思います。
そしてその言葉を頼りに子供たちが迷いながらも私の人格を尊重して勇気を持って一歩前に進み、施設入居を手伝ってくれたらいいなと思うのです。
⭐まとめ
施設入居を嫌がる親を説得するのはとても難しいことでしょう。
でも親に泣きつかれて在宅での介護の限界が見えているというのに施設入居を見送ることは家族全員を不幸にします。
認知症などで家族の手に負えなかった場合は堂々と親を施設に預けてください。
在宅で面倒を見れないことを恥じることはありませんし、施設に入れることに負い目を感じることもありません。
親を思いやることはあなた自身を大切にすることと一緒なのです。
かつて親が一生懸命あなたを守ってきてくれたように今度はあなたがあなた自身を守っていくべきだと思います。
認知症や在宅での介護に限界がくる前にたくさん親と話して感謝の気持ちを伝え信頼関係をしっかり築いておきましょう。
そして施設に入ったらできる限り面会に行って有意義な時間を一緒に過ごしていただくとよいのではないでしょうか。